クライミングからBCスキーまで、この地球にある山と自然を全力で楽しもうとする、とある人間の軌跡。

2020年4月13日

指の長さとホールディング

event_note4月 13, 2020 editBy W.Ikeda forumNo comments


手の大きさとホールディングの有利・不利などは今までもいろいろと議論されてきましたが、指の長さの比率とホールディングはどう関係してくるのでしょうか?

コロナで時間を持て余している昨今、ふと気になったので、自分なりに整理してみました。


①指の長さ比とホールディング

小さいエッジをクリンプ以外(つまりオープン)で保持するきどうやって持つのでしょうか?

もちろん、圧倒的に安定する真ん中の3本、つまり薬指~人差し指を使うひとが多いと思います

でも、小指~人差し指まで全部使う持ち方をする人も中にはいるのではないでしょうか?

A:小指~人差し指を使うオープン
B:薬指~人差し指のオープン

上の図の左が小指をかけるホールディング(以降Aと言います)で、右が3本指のオープンのホールディング(B)。

この二つの持ち方どっちをやる人が多いのかが気になります。

AとBは似ていいるようで手首の角度含め全然違った持ち方なので、力の入れやすさや故障リスクなどかなり大きく差が出てきそうな気がしてなりません。
それを調べてみようというのが、今回の記事のモチベーションです。

ちなみに自分は左の方の持ち方をする癖があります。


<Aのホールディングの条件>

もしAのホールディングができれば「オープンでかつ4本の指を使うことができる=指を傷めずより強く保持することができる」ホールディングになるように思えます。

では、このホールディングをする条件は何でしょうか? 



まず最初に、Aの持ち方だと、必然的に小指の長さにほかの指を合わせないといけないため、小指が短い人は中指などがカチ持ちの角度になってしまいます。
つまりその人たちにとってAはオープンではないのです。

そしてもう一つ考えることができるのが、人差し指が短いために小指~中指を添わせると人差し指が完全に脱落してしまうケース。完全に人差し指がかからないと、手の外側3本だけになってしまい、不安定になってしまうこと+指の本数が3本だけで力が入りにくくなり、あまりいいホールディングとはならないでしょう。


<接地面の基本軸>


もう少し前述のことを整理すると、AとBのホールディングで指先が壁に設置する軸が異なることがわかります。つまり、Aのホールディングは小指~中指の直線(青)を中心とするものの、Bのホールディングは薬指~人差し指の直線(赤)を主軸とするものといえます。

あとはそれぞれの直線に対してどの程度もう一本の指がずれているかが、AとBどちらのホールディングをやりやすいかに関係してくるのではないでしょうか?


<メリット・デメリット>

ここでAホールディングが持ちやすく感じる人は、なぜ持ちやすいのか考えると、

〇外の指を中心に持つので、広背筋・大円筋が使いやすくなる

ということが一番大きい理由ではないでしょうか?一方で

×指の長さの比率が限定的で一般的向けではない
×10mm以下の小エッジになってくるとどうしても指が立ってきてしまい、カチ持ち気味になる

という大きなデメリットもあります。
(3本指でのホールディングについて調べていたら、どの3本の指ををメインで使うのか指の本数とオープン・クリンプの違い、についてMickipediaさんでわかりやすくまとめてありました。)


②指比と性差

指の長さの比率と性別の違いの関係というと、エセ科学や占いみたいな響きがしますが、調べてみると科学的にしっかりと「指比」という言葉が定義されており、様々な研究がなされているそう。

参考
ナショナルジオグラフィック薬指の長さは性ホルモンが決定

Biological Psychology. 68(3): 215--2. F
Finger length ratio(2D:4D) correlates with physical aggression in men but not in women



結論だけ言うと、


男性は薬指が人差し指よりも長い人が多く、女性はその逆の人が多くなる。


あくまで全体的な傾向なので、男が全員薬指が長いというわけではないでしょう。
それでも、原因が何であれ、指の長さの比率には性差が有意にあるようです。

これがホールディングで果たしてどのように関係してくるのか、考えてみたいと思います。

以下の一節は、ちょっと踏み込んだ内容です。
しっかりとしたエビデンスがない、とてもバイアスのかかったものなので、参考程度に読んでいただけてたら幸いです。
ご指摘などあれば是非お願いします!


~~ ※この節はエビデンスがあやふやです※ ~~

個人的な偏見かもしれませんが、12台を登るクライマー全般を見ていると、男性はクリンプ~ハーフクリンプを多用、一方で女性は3本指メインのオープンを多用している気がするんです(ユースは除きます)。

なぜオープンを多用するかと考えたとき、以下の仮説を立ててみればすっきりするのではないかと思いました。

「小指の長さは薬指とある程度正の相関を持つ。つまり薬指が相対的に短い女性は小指も短い人が多く、オープンのホールディングとしてBの軸を選択するのが合理的で、クリンプをするときは手がA軸からB軸にはっきりと切り替わる
一方で男性の場合、比較的小指が長い人が多いため、ある程度の深さのエッジまではA軸を多用する。しかしエッジが浅くなってくるにつれてハーフクリンプの状態に近いホールディングとなり、意識してAとBを切り替えることをしない。」

正直、これがみなさんに当てはまるかどうかは全く分かりません。
性差以上に個人差が卓越している可能性は十二分にあります。

ちなみに海外や日本の有名クライマーを見ていると、男性は小指≂薬指くらいの薬指が長い人が多く、一方女性は小指が相対的にかなり短い人が多い気もします。(十数枚の画像を追っただけなのでとてもN数は少ないですが。)

~~   ※エビデンスがあやふや部分終了※  ~~



何がともあれ、自分はクライミングをはじめてからつい最近に至るまで、全くAとBとの切り替えを意識したことがりませんでした(もしかして自分だけ??)。

オープン=Aのホールディング一択と考えていたほどです。
初心者のころの比較的大きいエッジを持っていた癖が、そのままダラダラ続いてしまい、気が付けば全然Bではぶら下がれない状態になっています(現状)。

というのも、Aのホールディングで小さいエッジを持つと、前述の通り必然的にハーフクリンプ気味になります。
その場合、深指屈筋(指先の先端の関節を曲げるための筋肉)、特に中指のそれをなかなか鍛える機会がなく、そのためにBのホールディングの状態が全然達成できなくなっていると考えています。

(一番先端の指先の関節を曲げる筋肉が深指屈筋で、その内側の指関節を曲げるのが浅指屈筋。指を曲げると言ってもそれぞれつかさどっている筋肉が別々なのです。)


最近購入しました。とても分かりやすく、勉強になる一冊。

おそらくこの問題は、深指屈筋だけではなく、AとBのホールディングによる手首の角度の違いと・それに付随する体の使い方が異なることも大きな影響を及ぼしていると思いますが。

いずれにせよAとBの切り替え、これが最近の大きな気付きだったというお話です。
地道にBのトレーニングをして、深指屈筋を鍛えることにします。

多分、今まで無意識でAとBを切り替えることができていた人はそもそもこのトピックを問題にしなかっただろうし、自分みたいにAでごまかし続けていた人は気が付くのに時間がかかるテーマなのでは?と思うのですが、いかがでしょう?

ご指摘等ありましたら、是非お願いします。






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