クライミングからBCスキーまで、この地球にある山と自然を全力で楽しもうとする、とある人間の軌跡。

2020年10月16日

極寒の一ノ倉沢本谷

event_note10月 16, 2020 editBy W.Ikeda forum2 comments

 

一ノ倉沢本谷~4ルンゼ


雪が少ない年にしか登れないという一ノ倉沢本谷へ行ってきました。

コンディションも相まって、谷川の悪さを存分に味わう結構シビアな遡行になりました。





前夜にいつもの青鬼メンバーにピックしてもらって、ベースプラザまで移動。


下界の天気予報では曇り、ヤマテン予報では、風は弱いものの谷川山頂で霧や雨、場合によっては雪の予報が出ており、決してコンディションはよくなさそうな予感…


これは低体温との戦いになりそうだと覚悟して、大量の高カロリーな行動食と防寒具装備を用意。


水上のセブンで見つけたカロリーお化けな菓子パン。この嵩で450kcal!



4:00に起床して4:30にベースプラザを出発。



真っ暗な林道を歩いていると、霧雨と予報にはなかった風。

少し不安になりながら一ノ倉沢の出会いについたときにちょうど明るくなり始めて、いつ見てもおどろおどろしい様相の一ノ倉が。


で~~ん。コワ…


実は岩稜含めて一ノ倉のバリエーションは初めて。

いつも畏敬の念で見ていた一ノ倉にいざ踏み入れるとなると、少し緊張。


早速ハーネスなどを用意して入渓。


途中まではテールリッジなどと同じ道を辿る。




ひょんぐり滝で早速濡れて


なんか水量多くね??

ひょんぐりをくぐる。


そのあとはスタイルなど気にせず、濡れたくない一心でフィックスをユマーリング。

フィックスロープが結構使える。
岩が雨の影響で全部濡れていたのでありがたい。


途中でテールリッジへのアプローチについたフィックスから逸れて下降。

本谷に降りる。


ロープを出しつつトラバース。


一旦谷が狭まった先が広くなる。
スラブに上がるまでがフリクション系で結構悪い。
(というかフェルト靴じゃ多分無理)

一つ目の大スラブ帯。広い。


スラブで怖いけど順調に通過。

とりあえず上へ向かう。

すると本流はまた狭まり


例の滝。いや水多くね??
他の記録で見た写真だと全然水なかったんだけど??


チッペさんがリード



くそ寒い。
自分の体を単なる内燃機関とみなして必死に燃料補給。
ウェアは防寒対策のために上下ウェットスーツとさらにレインウェア。

フォローはスピード重視でユマール。
手がかじかみすぎてつらい。感覚がなくなる。


大滝の上は再び大スラブ。

スラブの罠にはまらないように右岸から左岸に移動。
難しくはないんだけど、ワンミスで死ぬ系なのでロープを出す。


ラインを考えながら登っていく。
時々いやらしい一歩があるけど、ロープを出していたらキリがないのでフリーソロ。
ワンミスが命取り。ずっとこんな感じなので精神的には少しつかれる。

振り返ると上部の紅葉はベスト。昼にかけて天気はいったん回復。
このとき10時過ぎ。


ようやく中間バンドに到着。

渓相がガラッと変わりスラブから岩々しいゴルジュへ。
雲に飲まれ、小雨が再びパラつく。

少し嫌なトラバース。


このトラバースをし終わったときに背後からジェット機のような音が。

最初は何の音かわからなかったけど、10秒くらい続いたのち岩がゴロゴロ転がっていく音も聞こえた。

たぶんどっかが崩落した音だと思うんだけど、いままで結構大きい落石や落盤の音は聞いてきたことがあったけど、それらをはるかに凌ぐ圧倒的な音量だった。

どんな崩落だったのかガスに包まれ見えなかったけど、地形的に99%さっき通ってきたスラブ帯~大滝に集中しそうなので、あと通過が1時間くらい遅れていたらと思うと背筋が凍る。


少しだけ谷川・一ノ倉の真の怖さを覗き見た気がする。


ただビビってばっかりだと先に進めないので、気を取り直して突破開始。




ところが実はここからが長かった。

まず滝一つ一つが結構手ごわい。




この前の台風の雨が抜けきってないせいか、どの滝も水量が多くシャワーをかなり浴びる。




その上、冷たい水で冷えた体は動きが悪く、夏ならなんてことない滝でも猛烈に登りにくい。


横を巻いたり

越せども越せども滝が出てくる。
もうお腹いっぱいです。

風も吹き抜けて本格的に寒いぞ。これは。

ヤバそうな動くハーケン1本で懸垂したり、
(右の青は一応バックアップ。最後の一人はそれも回収して懸垂)



まだまだ出てくる。容赦ない…

水量がどこまで行っても減らない…


いつの間にか時間が過ぎていて、気づいたらもう15時半。

途中までは温泉入りたいって話してたのに、これだと下山しても温泉が閉まってるよ…苦笑


寒さと日暮れが迫る中まあまあマジモードになって突破を続けると、結構なだらかで広い滝場が出てくる(写真はない)。

水流が結構いろいろな方向から合流してくるけど、クライマーズライト寄りの一番登りやすそうな沢に進むとようやく詰め感が出てくる。

ここからは写真も粗末だけど赦して…


水流が30分ほど歩くとなくなってネマガリタケの藪へ。


傾斜はそんなないけど、ネマガリタケがキンキンに冷えていて(笑)、
手の感覚がすぐなくなる。
まるでアイスクライミング。
時々斜度が落ちた時に両手を下げて血流を回復させる。あージンジンする。

一ノ倉岳へと続く稜線の踏み跡にようやく合流すると、反対側の空は雲が切れている。

なんとか日暮れ前に国境稜線に到着!時刻は既に17時!
とりあえず一安心。

西の空は夕焼けがきれい。
日も短くなったな~
少し寂しい。

とりあえず寒いので上半身だけ濡れた服を着替えて谷川岳を目指す。

もちろんすぐにヘッドランプを使う羽目に。


夜の谷川の山頂はじめて来たけどまあ夜景がきれいなんですわ。
高崎のほうまでくっきり。星空と合わせて思わず見とれてしまいました。
ナイトハイクっていうのも楽しそう。


西黒下降には持って行ったアプローチシューズが役に立ち快適に下山。

20:30下山なので行動時間はなんと16時間のロングランになりました。


お疲れ様でした~~
無事帰ってこれてなにより。



今回の一ノ倉沢本谷は天気や水量などのコンディションも影響してか、個人的にはかなりハードに感じた遡行になりました。

予想はしていたものの低温がかなり体に応えたのと、水量に関しては正直ここまでの増水を想定していなかったのでダブルパンチが結構効きました。


一緒に行ってくれたメンバーのお二人が強かったので無事遡行できたけど、正直自分だけの実力だとまだ厳しかったかなぁ…とも。


一度入渓してある程度まで遡行すると、スラブ帯もクライムダウンするにはちょっと難しいし、なかなかエスケープしにくいのもこの沢の難しいところ。


もし行かれる方がいれば、コンディションの見極め(水量・天候)と防寒対策はしっかりとするようおススメします(笑)。



自分はこれにて沢のシーズンアウト!
無事故で終わることができてよかったです。
さあ、またフリークライミングしよ!















2 comments:

  1. すぎょいっす!ちなみにウェットスーツは何mm厚やったんですか?読んでるだけで寒くて おしっこちびりそうっす。

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    1. ご覧いただきありがとうございます。
      ウェットはモンベルの2.5mmのパドリングジョン(下リンク)と、さらに同じ厚さのネオプレンのジャケットでした。
      https://webshop.montbell.jp/goods/disp.php?product_id=1127393
      それ着ていても、かなり寒かったです!

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